講演者インタビュー



「2年間の生活すべてが学びの場」
MBAで学ぶ中島さん

2020/1/25





中島 達朗(Tatsuro Nakajima)

UCLA Anderson School of Management Full-time MBA

略歴:東京大学基礎科学科(科学史・科学哲学)卒業(2009年)。大学卒業後は、コムシスホールディングス株式会社に勤務し新規事業開発を手がけた。2017年にUCLA Anderson School of Management Full Time MBAに入学。2019年6月に同過程を卒業。



——留学に興味を持ち始めたのはいつ頃からですか?

中島(敬称略):海外自体は子供の頃から憧れがありました。小学生の頃に仕事図鑑のような本を読んでいたら、最難関資格として弁護士・医者・公認会計士に並んで海外MBAというのが書かれてあって、漠然とした憧れをもっていたんです。今の会社には海外MBA派遣制度があり、ありがたいことに機会をいただいて、その制度を利用して留学しました。弊社には経営陣がなかなか育っていかないという課題意識があり、自前で経営陣を育てようという試みの一環で、MBA派遣制度ができたようです。その制度の第1期生として派遣してもらいました。同時に留学している同僚があと2人おり、ひとりはアメリカの別の大学に、もうひとりはシンガポールに行きました。現在(インタビュー当時)も次の候補者が1名いるみたいです。


——MBAの中でも、UCLA Andersonを選んだ理由はありますか?

中島:そもそも会社の取り決めで、留学先はグローバルで30位以内の大学、と決まっていまして、その中で(1年のプログラムではなく)2年間のプログラムでみっちり勉強したいと思って大学を選んだら、実質20校くらいしかなかったんです。その中から自分の分野であるエンジニアリングやIT、エネルギーに強いところを選んで、当然テストのスコアもあって、最終的に8校に出願しました。その結果、テキサス大学オースティン校、ワシントン大学(シアトル)などが候補として残り、最終的にUCLA Andersonが一番ランキングが高かったことと、カリフォルニアは再生可能エネルギーややITテクノロジーという意味では進んでいたということが大きな理由です。あと正直、ネームバリューが大きかったのも、社費派遣第一号として大きな理由のひとつですね。


——留学するにあたって大変だったことはありますか?また、それはどう克服しましたか?

中島:TOEFLです(笑)!2年間くらい留学準備をしていましたが、その間に20回くらいテストを受けましたね・・・学生時代から英語が苦手で、大学時第にもいろいろ迂回策を使って最低限の単位しかとっていなかったので(苦笑)。最初の1年間は普通の英語学校に通って、そのあとGMATとエッセイの専門学校に通いました。TOEFL直結の対策としては、英作文と発音を学ぼうと別の学校に通っていました。また、たまたま買ったTOEFLの本の先生の個人レッスンも受けていました。ありがたいことに会社も気を遣ってくれて、早めに帰ったりたまには休みをもらったりして、英語の勉強をしたりしていました。TOEFLは、小手先のテクニックではなく、地道に英語力を上げるのが一番重要かなと思います。


——留学してみて、留学前と大きく変わった価値観はありますか?

中島:思っていたのと違うなというのは、MBAは就職専門学校のようなものだったということです。そういう学校だとは想像してなかったので、びっくりしました。私もそうでしたが、日本企業から社費で留学してくる人は基本、MBAは経営学を学ぶところなのかなと思ってくると思うんです。でも、授業よりも就職活動を重要視していて、学生たちもキャリアップのための箔付けにMBAに来ています。レジュメ(履歴書)を書くための授業とかもあったり、学生が就職活動のために授業を休んでも教授は減点しなかったりします。他のMBAには通っていないですが、ほとんどのMBAはそうなんじゃないかと思います。また、(就職先になりうる)企業は授業でのGrade(評価)はそれほど気にしないようですね。そのため、学生には就職活動優先で授業にはほとんど来ない人もいます。MBA1年目に、夏休みのインターンのために就活をやって、インターンで卒業後のオファー(内定)がもらえたらそれで就活は終了です。オファーがもらえなかったり他のところに行きたくなったりしたら引き続き就活するなど、場合にもよりますが、2年間の在学中に就職先を決める人がほとんどですね。社費で来ているのは韓国人、日本人がほとんどですが、アメリカ人もコンサルティングファーム等から数名います。ただし、就職優先というのはネガティブな面ばかりというわけでもなく、むしろMBAというのは就職活動も含めて、学びのカリキュラムが設計されているのだと思います。就職には、業界分析・企業分析、自己分析、自己アピール、ネットワーキング、ネゴシエーション、といったスキルが必要なわけですが、こういう力は仕事をする際にも必要なスキルですから。ですから、MBAで学べるスキルを座学による「経営学」に限定して考えてはいけないと、今は思います。
 自分の価値観という意味では、アメリカに来た時にすでに30歳だったので、そんな簡単には人間変わらないというか(笑)。ただ、アメリカは人権に敏感なので、性差別などには気を遣うようになりました。社会での平等な扱いをアメリカ人は求めていると思うんですね。日本人は差別や人権についてもっと真剣に考えないといけないと思います。
 また、アメリカに住んでいて思うのは、アメリカのテクノロジーの進歩はすごいなということです。住んでいる間にもどんどん新しいサービスが出て来ていて、アメリカのネットサービスの興隆は見ているだけでも楽しいですよね。感覚としては、日本のほうが15年くらい遅れているなっていう感じがします。カリフォルニアだけかもしれませんが、アメリカでは技術と経済の発展の活発さを感じますね。自分も、自分の会社のリソースを生かしたら何ができるかと常々考えています。でも基本的に日本の会社はアメリカのやり方をコピ-していることが多いので、まだそのコピペを続けていけばいいんじゃないですかね。日本人は技術もサービスも日本が一番だと思っている人がたまにいますけど、うぬぼれちゃいけません(笑)。15年遅れているということは、まだまだ学ぶことが多く伸びしろもあるということなので。


——留学後は、どのように活動して行かれたいですか?

中島:準備に2年、実際の留学に2年と、足掛け4年くらいかけてるんで、かなりゆっくりやってますよね(笑)。戻ってからはIRの部署に行くことになりそうなんです。まあ、英語が多少できるからという理由なんですが(笑)。海外の投資家も沢山いるので、IR担当は年2回くらいNYやロンドンなどにも行ったりしていて、英語ができる人が欲しいみたいです。全然予想もしてませんでしたが・・・(笑)。個人的には、経営企画とかをやる部署に行きたかったんですけどね。将来は、会社の経営課題を見つけ出してそれを改善していくような仕事はやってみたいですね。経営について色々勉強したので、学んだ知識を生かしたいというのもありますし、そもそも経営陣を育てたいという理由で派遣してもらったこともありますしね。自社事業を牽引するような仕事をやってみたいです。MBA卒業生だと、アマゾンとかに就職(転職)する人も多いですが、そういった会社の一部門のマネージャーというよりも会社全体を俯瞰する仕事がしたいという気持ちが強いです。コンサルみたいな仕事にも興味はありますが、それよりもやはり事業会社の舵取りをしてみたいですね。もちろん、その中でひとつの事業の立て直しが必要だとなったらそこにフォーカスして業務を行うのはいいんですけどね。MBAの授業には、経営課題を与えられて解決策を考えるという授業もありました。自分たちで課題から発見するというのではなくて、課題が決まっていてそれを深掘りする感じなのでコンサルの仕事に近いですね。でも今は、そもそもの課題発見をやりたいなあと思っています。他にMBAの授業で役に立ったのは、そうですね、会計とか財務とかは楽しかったですね。。エクセルで(経営に用いる)数字を作っていくのは没頭できるので楽しかったです。


——留学したい方へ、具体的にアドバイスはありますか?

中島:がんばれとしか言いようがないですかね(笑)。実は、少し前までは、何でMBAに行きたいかをよく考えた方がいい、と思っていました。特に私費で来る場合は、膨大な学費と生活費のために借金も背負ってくる人もいると思うんですね。そして卒業後はアメリカで働きたいと思って来る人もいると思うんですけど、なかなか就職先がなくて日本に帰る人も多くて。それって2000万とかの借金を作ってやること?と思っていました。例えば、ファイナンスを授業やプロジェクトを通じて身につけたい、それで金融系の仕事に就きたいという目的がはっきりとある人は、日本のMBAでも十分にその目標は達成できるかもしれないわけです。「経営学」を学ぶだけなら、日本で日本語で学んだほうが、コストも効率もいいかもしれないわけですよ。でも最近は、そういった損得勘定はよくわからなくなってきています。行きたいと思ったんだったら頑張って行ってみれば、としか言えませんね。それに、どこの学校に行くかは、もしかするとそこまで重要でないのかもしれないとも思います。Admission Officeも、その学生が我が校に合っているかどうかをよく見ていると思いますし、それなりにご縁があるところに行くことになるんだと思います。先ほども言いましたが、アメリカのMBAは就職活動も含めて2年間の学生生活が設計されているので、生活全部が学びの場として考えられていると思います。だから、MBAにいるアメリカ人学生と同じような過ごし方をしてみた方が良いなと思います。たとえば企業から派遣されていると就職関連の活動は関係ないのですが、そこで関係ないとは言わず、何でもとりあえず関わってみる。就職活動も、クラブなどの学生活動も、さらに他の学生とのパーティーといった社交面もMBA教育の一環なので、周りの学生と同じようにやってみるのがいいんじゃないでしょうか。社費派遣の人は、インターンができるように派遣元から許可をもらっておくのがよいと思います。私は、夏と春にインターンをしたほか、TA(Teaching Assistant)もやりましたが、良い経験でした(お金ももらえましたし)。また、就職キャリアドバイザーとの関係が今ではもっとも素晴らしかったことのように思えます。あとは、なるべく床屋さんとか、飲み屋とかで、日本人向けのサービスは避けて、アメリカ人によるアメリカ人のためのサービスを利用するようにしていました。最後の学期には、アメリカ人向けのコメディのクラスにも通ったりしていました。いずれにせよ、2年間を必死にもがいていれば、何かしら得るものはあると思いますので、何をもって投資へのリターンとするかは人それぞれなのかと思います。
 とはいっても、留学には大きなコストがかかるので、職員を派遣する企業や官庁側は何を学ばせたいか、何を持って帰ってきてほしいかというのはよく考えないといけないとも思いますね。(私費で来ている)他の学生は転職ありきでMBAに来ているので、得るものがはっきりしています。かけたコストに対して、良い仕事を得るというリターンを得るつもりで来ているんですね。派遣で来ている日本人学生には、留学を2年間の休暇ととらえて、日本人同士で楽しく過ごしている人もいます。キャリアアップを求めてガツガツしている他の学生、アメリカで今後暮らしていこうと覚悟している他の国からの留学生にもまれて、何が何でも何かを持ち帰るという根性は必要だと思います。そういった点では、派遣での留学は行く方も送るほうも、目的がはっきりするといいなと思いますね。



<あとがき> 淡々と、ご自身の経験をニヒルな語り口で語られる中島さん。でもそのお話の中にはご自身の問題意識や今後やりたいことなどのエッセンスが詰まっていました。MBAに通って感じたリアルな発見や気持ちをしゃべっていただきました!
(文責:吉野彩 @yoshinoayap
Design downloaded from free website templates.