講演者インタビュー



「行動こそが、チャンスを手にし続ける秘訣」3Dプリンターによる電池の開発に取り組む成田さん

2018/11/22


家庭用機器も発売され、実用化が進んでいる3Dプリンター。プラスチックのフィギュアや食品がプリントされている様子をニュースで見たことのある人も少なくないだろう。では、アカデミックの最先端では一体どのようなものが作られているのだろうか。その一つの答えは、電池である。カリフォルニア工科大学(カルテック)の成田さんは、エネルギーを変換・貯蓄する「エネルギー材料」分野で応用すべく、3Dプリンターによる電池電極の開発に取り組んでいる。



成田 海(Kai Narita)

カリフォルニア工科大学 材料科学専攻 PhD課程

略歴:東京工業大学学部および修士にて材料化学を専攻し、2016年秋よりカリフォルニア工科大学(カルテック)のPhD課程に進学。東工大では生分解性インプラント材料の研究を行い、カルテックにて3Dプリンターの電池への応用の研究を始める。竹中育英会海外奨学生および、孫正義育英財団財団生。



——3Dプリンターの電池への応用とは、具体的にはどういう研究をされているんですか?

成田(敬称略):3Dプリンターで電池を作る技術は一応すでにあるのですが、より良い新しいやり方を研究しています。ただそのやり方自体が研究のキモなのでちょっとこれ以上は言えないのですが(笑)。元々、すべてのモノのもととなる材料を開発する材料分野で人々の生活にインパクトを与える研究がしたいと思っていて。学部・修士で鉄やアルミといった金属工学を専攻する中で、車のボディ製造などを全部3Dプリンターで行えるようになったら、製造工程に大きなインパクトを与えられるな、と考えていました。その後、電池の研究に出会い、エネルギーを貯蓄し得る電池を3Dプリンターで作れたら面白いのではないかと思って、そちらの研究にシフトしました。金属が溶けるのも電池が動くのも、電子の移動が起こるという意味では同じ現象なので、研究テーマはシフトしやすかったですね。


——最初は異なるテーマの研究をされていたのですね。今後も、現在のテーマで研究を続けていかれるご予定ですか?

成田:今後どこで、どのテーマを研究するかはまだ決めていないのですが、将来は国か企業の研究所で働きたいと思っています。3Dプリンターか電池のどちらかの分野で、そのときにやりたいことができたらいいなと思います。電池分野は、例えば電気自動車の普及のために、トヨタなど企業での研究が進んでいますが、アカデミックにいると企業の最先端の研究は分からないので、企業でもインターンをしたいですね。
また、日本とアメリカの研究事情は分かってきたので、他国でもインターンをしてみたいです。昔からドイツのマックスプランク研究所に憧れがあるので、将来ポスドクかインターンで行きたいなと思っています。博士課程にカルテックを選んだのは、今の研究室が3Dプリンター分野の研究で強いというのもありますが、研究結果を実践的に応用するエンジニアリング(工学)よりも、理論自体を研究するサイエンス(理学)に力を入れている大学であるというのがもう一つの理由です。日本にいたときに専攻していた金属工学は青銅器時代から存在していて、すでに学問として応用が進んでいるためエンジニアリングの側面が強く、サイエンスの部分が足りていないと自分では感じていたんです。なので、サイエンスの側面を大事にしているカルテックを選べば、理論研究への知的好奇心を満たせると思いました。


——実際アメリカに来られてみて、日米の研究環境に違いを感じることはありますか?

成田:それはよく聞かれるのですが、正直、コメントできないなというのが素直な回答です。なぜかというと、日本の研究室のうちトップ10%が科学技術発展に重要な貢献をしていると思っているのですが、僕はその日本トップ10%の環境を知らないまま世界のトップ10%の環境に来たので、一概に比べられないと思うんです。これは日米の違いというより所属する研究室の違いが大きくて、その人のいた環境によって意見が異なると思います。あとは、日本では夜遅くまで働いている人の方が頑張っているという評価を得たりしますが、アメリカでは効率よくやって早く帰る人が評価されると思います。
研究内容については、自分で決められることも半分くらいはありますが、予算を出してくれる国や共同研究先の企業との間で決める目標を達成することが大前提です。ある程度仕事ができるようになると、自分のやりたいテーマでお金を取ってこれるので、自分がやりたいことがもっとできるようになります。これは日米同じだと思いますが。


——いつ頃から海外での研究を考え始めたのでしょうか?

成田:学部3年生くらいのときに研究者になりたいと思い始め、そのために博士を取ろうと思っていました。留学を決めたのは学部4年生の時ですが、3年生で初めて海外に行くまで、実は海外に行く選択肢はありませんでした。僕の周りには、同じ大学で学部、修士、博士まで行く人が多かったんです。修士から博士に進学する人のうち、ほとんどは同じ大学に進んでいました。今は少し事情が異なるかもしれませんが、当時は、将来日本で働くなら、教授や助教授の空きポストの情報をキャッチするためにも国内にいた方がやりやすい、という状況がありました。


——日本で研究を続ける人が多いんですね。そんな中で、成田さんが海外に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

成田:学部3年生の時、グループで研究発表をして、優秀なグループは海外で行われる国際学会に行く権利が得られるという授業があって。それで優秀賞を取り、初めて海外に行ったんです。ちょうど僕の学部時代にはそういう授業や留学プログラムが多くて、その後も2〜3ヶ月に1度はアメリカやヨーロッパ、アジアなど海外に行く機会に恵まれまして。それで海外へのハードルが下がりました。また、その留学プログラムで一緒にイギリスに行った韓国人留学生の友人が、修士はケンブリッジ大学に行きたいと言っていたんですよね。すでに日本に留学しているのにさらに留学したいのか、フットワークが軽いな、と驚いて。それから、海外の大学院も選択肢として考えるようになりました。


——最初は学校の授業がきっかけだったんですね。それから、留学に向けて準備を始められたのですか?

成田:はい、その後修士2年間の間、海外に出る準備を着々としていました。例えば、修士1年生のときに、Science Slam(自分の研究を専門外の人にいかに楽しく伝えられるかを競うイベント)に応募して、優勝してヨーロッパに行きました(成田さん優勝の様子)。これはEU主催のコンテストで、優勝するとヨーロッパでのワークショップに参加できるのですが、その時に事務局がマックスプランクの教授とつなげてくれました。また、当時の指導教員のつてで、ケンブリッジの先生ともお会いして小一時間研究の話をすることができて、その場で博士課程の合格をもらうことができました。結局行きませんでしたが。


——それはすごいですね!元々人前でのスピーチがお得意なんですか?

成田:いえ、昔からスピーチに慣れているわけではないです。その時たまたま、お笑いについて卒論を書きあげた文系の友人がいて。その友人からアドバイスをもらって、飲みながらスピーチ内容を仕上げました(笑)。


——友人にも恵まれていますね(笑)。それにしても、チャンスを得るために行動し続けられるのはすごいことだと思います。

成田:当時、僕の大学には、積極的に何かしようという人が少なくて。なので、行動して一度周りから抜きん出ると、ずっとチャンスが入って来続けたんです。一度「国際学会で英語で発表した」という経験を得てしまえば、恐れがなくなって、次からも挑戦できるようになる。それで周囲からの信頼も得られれば、次も周囲がチャンスをくれる。エスカレーター式に上昇していける感覚でしたね。特に日本だとみんな横並びなので、頭一つ抜きん出るチャンスがあればそのあとはうまくいくと思います。


——はじめの一歩を踏み出すことの大切さが伝わってきました。最後に、海外留学を考え始めた人たちへのアドバイスはありますか?

成田:まずは一回行ってみるのがいいんじゃないでしょうか。半年でも1ヶ月でも1週間でも、気になる学校があれば、まず行って雰囲気を見てみる。それで興味が持てたら、続けて留学すれば良いと思います。大学院進学とか交換留学とか色々やり方はありますし、今は奨学金制度も充実しています。僕も、最初から英語ができたわけでも、特別成績が良かったわけでもありません。やろうと思えば案外なんとかなるものですよ!


——勇気が出るお言葉をありがとうございました!



<あとがき> 非常に謙虚で落ち着いた話ぶりでありながら、数々の素晴らしい受賞エピソードが出てくる成田さん。成功する秘訣は、とにかくまずは行動すること。行動することで自信もつき、次のチャンスもやってくるというご自身の経験に則ったお話には、大変説得力がありました!
(文責:吉野彩 @yoshinoayap
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