講演者インタビュー



南極海の研究をする意味とは

2018/11/22


——南極。
この言葉から、あなたは何を思い浮かべるだろうか?

寒いところ?地球温暖化?何となく思い浮かぶが、実はよく知らない。そういう人も多いはずである。私も中山さんの講義を聞くまで、正直ペンギンの映像くらいしか頭に浮かんでいなかった。

NASA/Caltechの施設であるJet Propulsion Laboratoryで南極を研究する中山佳洋さんは、「世界の海の中で、南極海は最も分かっていない海」だと言う。しかし、南極は地球の気候変動を考える上で重要であり、世界中の機関で研究が進められている。今回のインタビューでは、南極研究の意義や、学生へのアドバイスなどをお話いただいた。



中山佳洋 (Yoshihiro Nakayama)

Jet Propulsion Laboratory

略歴:名古屋大学工学部機械航空工学科卒業(2009年3月)。修士課程から地球物理、特に極域の海洋の研究を始める。北海道大学環境科学院(2011年3月卒業)。博士課程のため渡独しAlfred Wegener Institute, Helmholtz Centre for Polar and Marine Research/University of Bremenにて西南極、特にアムンセン海の研究を始める(2015年2月卒業)。2015年7月より渡米し、University of California Irvineを経て、現在Jet Propulsion Laboratoryでポスドク研究員。



——学部時代は航空工学を研究されていたとのことですが、その後、研究対象を南極に定めたのはなぜですか?

中山(敬称略):半ば「カン」です(笑)。カンは鋭い方なんですよね、昔から。ある日、偶然ついていたテレビでイギリスの南極研究者のドキュメンタリーが放映されていて。それを見て、ビビッときたんです。その頃ずっと、何を研究対象にしようかをずっと考えていたので、アンテナが立っていたのが良かったのだと思います。


——南極の研究者になろう、と。

中山:いえ、特に研究者の立ち位置にずっといたいと思っているわけではないんですよね。自分が面白いと思うこと、やりたいこと、そして世界にとって意味があることをやりたいと思っています。それを達成するための手段が研究ではないと気づいたら、研究者をやめてもいいと思います。7〜8年間、南極の研究を続けていますが、世界の海の中で、一番分かってないことが多いのが南極なんです。そして南極は、今後100〜200年のスパンで長期的に考えると、最も人間社会に影響を与える可能性がある海です。だから南極を知ることは大事だと思っています。


——なるほど。そして、この秋からは大学の助教授になられるとのこと、おめでとうございます!教える立場として、学生に伝えていきたいことは何かありますか?

中山:特にないです(笑)。僕が頑張れと言っても皆が頑張るわけではないんですよね。学生から具体的にアドバイスを求められたら応えますが、具体的に聞いてくるくらいにやりたいことがある人って、自分で勝手にやって成功していくと思うので。<


——質問を変えます(笑)。では、やりたいことが分からないとか、やりたいことが見つかったけど何から始めていいか分からないという悩める若者に、何かアドバイスはありますか?

中山:それはあります!まずは何をやりたいかを考え続けることが大事だということ。僕も研究対象を何にするか考え続けてアンテナが立っていたから、南極という研究対象を発見することができました。そして、やりたいことが見つかったら、その対象のトップレベルの環境に自分を置くこと。例えば研究者なら、トップレベルの研究者や教授を見つけて、その人たちの生活を間近で見たときにやっと「自分もこうなれる」というイメージができるようになります。
例えば「ワインを作りたい」と思ったら、実際にワインを作っている生産者のところに行って彼らの生活を見てみないと、どうやればその夢が達成できるのかイメージできないですよね。僕はこれまで、アメリカ、日本、ドイツ、そして再度アメリカと場所を変えて、その時々で自分がトップだと思う環境に飛び込んで来ました。飛び込み方は、いきなり職を得るとか学生になるとかでなくても、インターンでもいいし、まずは見学だけでも何でも良いんです。とにかく足を運んでその「現場」に行って、環境や人を実際に見てみることが一番大事だと思います。


——確かに、まずは現場に飛び込むというのはとても賛成です。具体的にイメージができれば一気にやりたいことに近づける気がしますよね。

——では最後の質問です。海面上昇に限らず、地球の抱える問題はたくさんあると思います。地球環境を守るには、100年単位の長いスパンでどう付き合っていくかを考えないといけないと思いますが、100年先の地球のために私たちが今できることは何かあるでしょうか?


中山:それは難しい質問ですね・・・。戦争とか経済とか、地球上の問題っていっぱいあると思うんですけど、そういう問題は、みんなある程度他人事だと捉えているんです。でも、実際、そういう問題を自分のことと捉えよう、といっても、無理ですよね。そんな中でも、周りや世界の問題を少しでも自分で考えてみてほしいとは思います。そして、僕は、将来の人類が今を生きる人達より幸せになっていたらいいなと思っています。そのためにできることがあるとしたら、その状態をイメージすることでしょうか。イメージすることで、それが実現していくので。悲観的になって倒れない程度に世界の問題について考えてみましょう、というのが答えですかね(笑)。


——深い、真摯なご回答をありがとうございました!



<あとがき> 世界トップレベルの研究所で南極調査に邁進する中山さん。自分が面白いと思えて、かつ世界にとって意味があることをやりたい、と言い切られたのが印象的でした。将来の人類が少しでも幸せになれるよう、私もイメージし続けていきたいと思います。
(文責:吉野彩 @yoshinoayap
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