第67回SCJSF&JABAオンラインフォーラム
「デザインとイノベーション エコシステム」
日時:
LA:2022年6月17日(金)午後6時~8時
日本:2022年6月18日(土)午前10時~12時
講演1
「ビジュアルコミュニケーションの科学」
佐藤久太(サトウ キュウタ)
所属:Nike Global Brand Experience / Designer
要旨:デザインの世界には"Design as an Attitude"という言葉があります。"デザインすることは職業ではなく姿勢である"というこの考えは100年も前から提唱され、特殊技能として捉えられてきたデザインを広く開放するためのものでした。今でこそデザインの分野が認知される機会も増えましたが、同時に多くの誤解も存在しています。”クリエイティビティ”や”センス”といった曖昧な言葉は現場で使われませんし、プロセスは思った以上に論理的です。本講演は多くの人が直面するであろう”モノを伝える”という課題について、デザイナーがどのようなアプローチで解決するかをノンデザイナー向けに解説したものです。人間の認知特性をベースに、情報アーキテクチャの分野から絵画的な構図やレイアウトに関してもカバーする予定です。デザインはデザイナーだけのものではなく、すべての人にとって開かれた重要な問題であることをお伝えできたらと思います。
ご略歴:2014年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、ロサンゼルスのArt Center College of Designに進学。在学中にハリウッドの映像スタジオやゲームのスタートアップを経験し、2021年Graphic Design学科を卒業。同年よりNike Global Brand Experienceチームにて店舗の体験設計とデザインを担当。
講演2
「大学発の新しい医療機器開発:日本・米国におけるイノベーション エコシステムを経験して」
結城一郎(ユウキ イチロウ)
脳神経外科医 専門:脳血管内治療
所属:UC Irvine Medical Center, Dept. of Neurological Surgery, Associate Clinical Professor
要旨:脳神経外科医として、脳血管障害の患者の治療に20年以上携わって来ました。私たちが、研修医のころ思い描いていた、未来の脳神経外科治療に、今の技術は近づいているのでしょうか? カテーテルを用いた治療が導入され、その治療技術が飛躍的に改善したことは間違いないでしょう。 しかしその一方では、今の技術の限界にストレスを感じながら、日々治療を行っている血管内治療医は多いのではないでしょうか。「もっと安全な、もっと容易にコントロールができる医療機器が欲しい。」その思いが、私自身の新規デバイス開発を行う事の大きな原動力になってきました。そして、様々な医工連携や産学連携プロジェクトから、多くのものを学び、その一方で、いろんな疑問に直面して来ました。 例えば、日本のEngineer やScientist は、素晴らしいイノベーションを日々世の中に送り出しています。そして日本の医療水準も世界有数の質を誇っています。しかしながら、医療機器はほとんどが欧米の商品に頼っているのはどうしてでしょうか?私自身は、日本と米国を7-8年ごとに行ったり来たりしながら、両方のイノベーション・エコシステムを、たまたま経験することができました。日本のシステムのどんなところが優れているのか、そして米国のシステムにはどんな違いがあるのか、現在開発中の医療デバイスを通して、私自身の経験した紆余曲折を共有させていただければと思います。
ご略歴:1995年東京慈恵会医科大学を卒業後、同大学脳神経外科にて研修を修了。2002年より米国UCLA 放射線科に留学。脳血管内治療の臨床トレーニングを行い、同時に血管内治療デバイスの研究・開発に従事。2008年より同大学Leo G. Rigler Research Center の共同施設長を務める。2018年より現職。 UC Irvine Medical Center (米国・カリフォルニア州)脳神経外科にて、主に脳血管内治療に従事。また、次世代血管内治療デバイス開発をNeuroendovascular Research Centerにて行う。2020年、新しい液体塞栓物質の開発のために、共同研究者とともにスタートアップ会社、AquaTeX Medical を創設。現在、同社CEO。