第65回SCJSF&JABAオンラインフォーラム
「UJA論文賞受賞講演」


日時:
   LA:2021年5月21日(金)午後6時~8時
   日本:2021年5月22日(土)午前10時~12時



講演1
「患者死亡率と医師の誕生日」
加藤 弘陸
所属:慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教

要旨:私たちは、自分自身が患者の立場になった時、医師が最高の状態で治療に臨んでくれることを期待する。しかし、現実には多くの医師は非常に多忙であり、医師といえども人間であるため、時と場合によってはその能力を十分に発揮できない恐れがある。実際、医師に限らず、高度な教育を受けた専門家でもパフォーマンスは一定ではなく、一見業務に関係なさそうなものも含め様々な要素がパフォーマンスに影響することが最近の研究で明らかになってきた。本講演では、今年のUJA論文賞(特別賞)をいただいた私の研究(Kato H, Jena A B, Tsugawa Y. Patient mortality after surgery on the surgeon’s birthday: observational study BMJ 2020; 371 :m4381)を中心に、医師や裁判官といった専門家のパフォーマンスの決定要因について、いくつかの最新の研究を紹介する。本講演を通じて、専門家がその能力を十分に発揮できる働き方・環境を考える機会を提供できれば幸いである。

ご略歴:2013年3月、京都大学経済学部卒業。2018年3月、京都大学大学院経済学研究科にて博士号(経済学)を取得。日本学術振興会特別研究員DC1(2015年4月~2018年3月)、特別研究員PD(2018年4月~2020年10月)、David Geffen School of Medicine at UCLA 訪問研究員(2019年3月~2020年10月)。現在、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教として、医療政策の影響などに関する研究を行っている。


講演2
「“感情”を形作る脳内の仕組みに迫る」
苅郷 友美
所属:Division of Biology and Biological Engineering, Caltech ポスドク研究員

要旨:私達が日々感じる喜び、怒り、恐怖、悲しみといった感情は脳内で起こる様々な神経活動により形作られていますが、これらが脳内でどのように制御されているのか、そのメカニズムの大部分は未だ謎に包まれています。神経科学を含む多くの生命科学研究分野では、侵襲的な実験を行うことが難しいヒトではなく、マウスをはじめとした実験動物モデルを用いて基礎研究を行います。感情をもたらす仕組みをヒトで研究をする際は、被験者にその感情を言葉で表現してもらうことが可能ですが、動物は感情を言語化して私達に伝えることはできません。それではどうやって動物を用いて感情を制御する脳内メカニズムを研究することができるのでしょうか。最新の神経科学的手法と動物行動学を組み合わせることで、動物の感情とその背景にある脳内メカニズムに迫る近年の研究を紹介します。

ご略歴:2009年東京大学理学部卒業。同大大学院にて神経生物学研究により2014年に博士(理学)を取得。同研究科ポスドク研究員を経て、2015年5月より現職。