第62回フォーラム
「バタフライエフェクト」


日時:
LA:2020年8月21日(金)午後6時~7時
日本:2020年8月22日(土)午前10時~11時


講演
「ロサンゼルスの蝶が東京で引き起こすかもしれない台風を、宇宙から捉える」
南出 将志
所属:東京大学大学院 工学系研究科 助教
   NASA Jet Propulsion Laboratory 外部研究員


要旨:みなさんは、天気予報にどんな印象を抱いているだろう。十分に正確?全然当たらない?実は、完璧な天気予報というものは不可能であることが、科学的に知られている。エドワード・ローレンツ博士の「ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか」という有名な問いかけに象徴されるように、気象は驚くほどに繊細な現象である。蝶1匹の羽ばたきなどという、あるか無いかも分からないような僅かな差異によって、劇的に表情を変えてしまう。では気象予測は無意味なのか?というと、そんなことはない。古代の大ざっぱな予測に始まり、科学的理解の進歩や、スーパーコンピューターのような科学技術の発展に伴って、気象予測精度は人類の歴史と共に永く発展し続けてきた。中でも、気象衛星の登場は画期的で、近代の天気予報は”pre satellite era”と”post satellite era”でがらりとその様相を変える。本講演では、気象予測を阻む要因となっている気象のカオス的性質、所謂「バタフライ・エフェクト」について説明する。その上で、カオスを乗り越えるための、気象衛星を活用した最先端の気象研究について紹介する。

ご略歴:2013年3月、東京大学工学部社会基盤学科を卒業。2014年8月に同大学工学系研究科社会基盤学専攻修士課程を短縮修了。修士論文は同専攻の古市公威賞を受賞。2014年9月より、Pennsylvania State University / Dept. of Meteorologyの博士課程に進学。2018年5月に同課程より博士号取得。現在は、東京大学工学系研究科社会基盤学専攻助教、およびNASA Jet Propulsion Laboratoryの外部研究員、船井情報科学振興財団理事。専門は熱帯気象とデータ同化、特にハリケーンの力学とその数値予報。2016年4月より、米国大学院学生会代表を務めている。Funai Overseas Scholarship Student (2014-2016)。